Soba Canada

蕎麦と健康に関する話
    
1)そばの効用/French Paradox
                   ☆☆☆ソバ粉と米、小麦粉等の成分表を見る。☆☆
     
2)東洋の医学・哲学・生活が、米国を含む西洋人から見直されている
                3)東西の融合による更なる飛躍へ向けて

                   ☆☆☆  資料 免疫に付いてを見る・・・by小島正☆☆☆
     
4)食の安全確保と科学万能主義の戒め

健康は皆の願いです。高齢化社会になって、とかく健康の維持増進に関心が向き、世の中所謂健康ブームの様相を呈しています。毎朝朝食の替わりに、山のようにビタミン剤を飲んだり、室内運動用自転車漕ぎ機を買って来たは良いけれど、三日坊主で終わってしまい、押し入れにホコリを被ったゴミとなっていたり、高い会費を払ってスポーツクラブの会員になったはいいけれど、忙しさにかまけて2/3回使っただけで放ったらかし、夜呑みに出掛けた時にクラブの会員証を見せては自慢するだけになっているとか、気持ちは有るのだけど、毎日ではなくとも、週一回にしても定期的に健康の為の行動を取る事は、一寸億劫だと云うのが、私も含めた大方の人の悩みでしょう。取り敢えずは、これと言って医者通いをする必要もない、只腹が出ているとか、健康診断の血液検査結果では、要注意のバッテンが三つ四つ出ているけれど・・・まあいいか・・・って言うところでしょう。
健康は、何をするにも、そのベースになる訳ですから、勿論蔑ろには出来ない問題ですが、さりとて未だ問題も起きてないのに、あれこれするのも、煩わしいと感じるものです。だから、自分では積極的に努力しなくても、気が付かないうちに健康の維持増進に役立っているものがあれば良いのですが・・・。そんなもの、ありっこ無い? いやーっ、有るんですねこれが。 先ず、徒歩圏内だけれども、駅からソコソコ遠い、しかもエレベーターの付いてないマンションの5階に家を買うんです。嫌でも歩かされて相当の運動量を稼げます。少し意識して、駅の構内ではエスカレーターには乗らない、会社ではエレベーターを使わない等を毎日やれば、マッチョマンになるのでなければ、ジムになんか通う必要は有りません。一銭も掛からずに健康になれる事請け合いです。かく云う私も、トロントで会社勤めの時は、地下駐車場から11階のオフィスまで、毎朝階段で昇っていたのです。しかも結構重い鞄を持って。体調って、毎日微妙に異なるもので、割と難なく昇れる時と、5階位でもうアウト、エレベーターが脳裏を過ぎった事も数知れずありましたが、頑張りました。始めた時は、オフィスに着いた時は、息が上がってGood Morningも満足に云えないテイタラクでした。こんな事を一月か二月続けてみたら、息切れを起こす階数が少しずつ上に上がって来ましたし、所要時間も短くなって来ました。前夜寝るのが遅かったとか、一寸風邪っぽいなとか、何時もと違うことがあると、直ぐに判るようになりました。バイオリズムの表など見なくても、その日の体調の良し悪しが判るようになったのです。たった、これだけの事ですが、何でもやってみるものですね。ほんの一寸した努力で、クロスカントリースキーをやっても、若い人にも全く引けを取らないほどの快調さでした。これと同じ事を誰にでも勧める訳には行かないかも知れませんが、実はもう一つ良い方法があるのです。これは、全く努力を必要としないで、健康になる方法です。
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(1)そばの効用
  ここからがいよいよ本題。もう、お判りでしょう。えっ?未だ答えに気が付いていないですって? これは、蕎麦屋のホームページですよ、しかも、タイトルにハッキリ書いてあるじゃないですか。これでも気が付かなければ相当なものですよ、あなたって。でも大丈夫、そんな血の巡りの悪い人(御免なさい・・・)にも打って付けなのが、美味しい本物の蕎麦を食べる健康法です。血のことなら、蕎麦の最も、得意とする分野なのです。悪玉コレステロールの退治やら、毛細血管等の強化や、血圧を正常値に戻す働き等を通じた痴呆や脳出血、脳障害、癌、心臓疾患等の生活習慣病の予防と治療、更には若返りにも効果があるというルチン(Rutin)を始めとする、ポリフェノールの仲間が蕎麦には多く含まれているのです。

「フランスの逆説」(French Paradox)
パリのエッフェル塔ポリフェノールって云えば、赤ワインが有名で「フランスの逆説」なんて云われて随分有名になっています。これは、フランス料理はソースが決め手と言って、バターやチーズなど脂っ濃いものを沢山食べる割には、フランス人の心臓病等成人病になる率が、英米人よりも少ないのです。何故だろう?と調べた結果、フランス人が大量に消費する赤ワインに含まれるアントシアニジンと言うポリフェノールのお陰だと判ったのです。 余談ですが、フランス革命で断頭台の露と消えたかのマリー・アントワネットは、若返りの為に赤ワインで毎日顔を洗っていたと言われています。ルチンやポリフェノールには、免疫機能を高め、高血圧や癌を防ぐ他、消化や神経機能を調節し、老化までも抑制する機能がある事が、最近の研究で判っています。 実際フランスでは、ルチンを主成分とした化粧品も有るようですから、マリー・アントワネットは200年以上も前に、とても科学的な美容法を実践していた訳です。ギロチンの露と消えなかったらどうなっていたのでしょうか?興味深々ですね。ポリフェノールは、植物に含まれる抗酸化物質で、生活習慣病の元凶である、活性酸素を除去する生体調整機能を持っているのです。人間の生体には、この活性酸素分解酵素であるSOD(
スーパー・オキシド・ディスムターゼ)もありますが、年齢と共に能力が衰え、防御システムに破綻を来たすようになるのです。これが機能しないと癌や心筋梗塞を始めとし、アルツハイマー病や肝硬変・脂肪肝に糖尿病など、成人病になりやすいのです。お茶に含まれるタンニン(カテキン)なども、ポリフェノールの仲間ですが、最近の研究では、蕎麦にはこれらの物質が沢山含まれている事が判って来て、製剤化までしようという話しもあるようです。
歳が知れてしまいますが昔、学校給食で、身体に良いからと、青臭い脱脂粉乳をヌルヌルしたアルミの器で無理やり飲まされた記憶がありますが、あれは地獄でした。残すと先生に叱られるし、全部飲むと気持ち悪くなるし。良薬口に苦しと言って、普通はそんなものなのでしょうが・・・。だけど蕎麦の場合は全く別です。美味しくてスルット食べてしまい、もっと食べたくなるのですが、何時も食べているうちに健康が嫌でもオマケで付いて来るという、願ってもない、有難い食べ物なのです。薬膳料理と言うのがありますが、薬ではなく料理が料理である限り、食べて美味しい事が一番重要な事で、美味しいから自然と食べて、その結果として薬膳効果が出て健康になるのですが、蕎麦も全く同じです。ですから蕎麦食を習慣化する様にしましょう。習慣化してからフット気が付く事でしょう。そう言えば、最近通便も良く、身体が軽く快調だし、いつもひいていた風邪すらひいてないなぁと。本当の健康とは、そう言う状態を言うのだと思います。
蕎麦のご利益って、マダマダ沢山あります。蕎麦の蛋白質のアミノ酸組成が、高血圧や脳卒中発症の予防効果の高いリジン含有量が多く(700mg/100g当り)、米や小麦の二倍から三倍もあり、アミノ酸スコア-が優れている(最優良蛋白質である卵を100とした時の値で、挽きぐるみ蕎麦粉93、大豆73、玄米68、小麦粉44等と生物学上の価値が高い。)、その他繊維質、ビタミン、ミネラル等が豊富で他食品の追随を許さぬ優秀食品が蕎麦であると、従来はその栄養素による生命維持と言う食品の第一次機能の優秀性が注目されていました。(蕎麦のみならず、他の食品も全てそうでした。勿論今後もこの一次機能も重要である事は論を待ちません。)しかし先進諸国では、飽食の時代と言われ大量生産や大量消費が日常化している現在、必要栄養素の摂取量の確保等は昔の事。今は如何に過剰摂取を抑え、肥満を防ぎ、バランス良く必要栄養素を摂るかが課題になっているのです。2006年には、世界保健機構(WHO)とEUや中央アジアの53カ国が、「欧州肥満防止憲章」を採択し、加盟各国政府の最優先課題として、2015年までに肥満増加に歯止め掛ける決意を固めました。2010年の欧州は20%以上が肥満(欧米ではBMIが30以上を肥満と定義している。 日本では25以上とやや厳しい定義となっているが、それでも10%未満、同じベースに直すと3%となる由)北米では特にアメリカの肥満問題が深刻で
CDC (疾病対策予防センター Center for Disease Control and Prevention) は、「肥満は、ありふれた問題だが、深刻で金が掛る」と言っている。

人類初の高齢化社会に突入し、健康の意味が改めて問われている状況下、食品の第三次機能である生体防御と体調調節機能が栄養学の中核に据えられるようになって来ました。ルチンを始めとする抗酸化機能を有する諸物質を多く含む蕎麦は、心臓病、脳血管障害や癌や或いは糖尿病等の生活習慣病の予防と治療に極めて効果がある事が最近の研究で徐々に解明されてきており、脳の鎮静、若返り等の効果も証明され、心身両面への貢献の高さが各方面からの注目を浴びつつあり、まさに未来的な食物が蕎麦なのです。詳細は別途書くとして、今は、優良たんぱく質を始めとし、各種ビタミン、ミネラルや食物繊維(ヘミ・セルロース)等にも恵まれたバランス栄養食である、とだけ簡単に言っておきましょう。特にソバの実は、外側に行くほど蛋白質が増えるのですが、表層粉で15%の含有率は、玄米や小麦等の他の穀物より遥かに多く、しかもグルテン・フリーなのです。 因みに、食品の第二次機能とは、生体感覚に訴える官能機能の事で、味、香り、食感等食欲に拘わる機能で、ソムリエ的な仕事であるが、科学的なアプローチの難しい奥の深い分野です。
☆☆☆ソバ粉と米、小麦粉等の成分表を見る。☆☆☆

消化も良く直ぐエネルギーになるダイエット食ですから、赤穂浪士の吉良邸討ち入りの時は蕎麦屋で腹ごしらえしたと言う俗説もあるのは、消化の良さとスタミナが付く蕎麦の効用の他に、粋でイナセな食べ物としてその当時既に庶民の生活の中に、確固として根付いていた証拠でもあり、芝居効果を高める為のものだったとも思います。又比叡山の千日回峰行等や修験者の荒行時の携帯食料として、蕎麦が不可欠な食料だった一事でも、その効用が判ります。今風に言えば、登山やキャンプの携帯行動食としても、最適な栄養食品なのです。でも、幾ら蕎麦が滋養に満ちた素晴らしい食べ物でも、完全食ではありませんから、それだけ食べていれば良いというものでは無いことは当然です。完全食などは、この世に存在しないのです。私が日頃苦々しく思っているものの一つにサプリメントがあります。何かが良いとなると、直ぐに錠剤にしてしまい、不必要な程大量に飲んでしまう。良いものなら、沢山取って早くラクに御利益に預かりたい心情は判らない訳ではありませんが、そう言う安易な考え(と言うより無知と言ったほうが適当でしょう)は、戒めるべきです。錠剤の量は適当か?又成分一つ一つとしては、役に立つものでも、他の成分との関係で複合的作用の場合はどうか?等まで思いを馳せて初めて薬となるのですが、用い方を誤ると逆に毒として作用するのです。良く、役立たずな人の事を、毒にも薬にもならない奴と言いますが、毒は薬に、薬は毒にもなるものだと言う事をシッカリと弁えておく必要があります。或は、馬鹿とハサミは使いようとも言います。使いようが悪ければ、どんなに優れたものでも悪となります。これが東洋の知恵、中庸です。今後我々はモット賢くなり、科学者や政治家は哲学者にならなければなりません。
最近では、大豆成分を抽出したサプリメントが流行り、エストロゲンという女性ホルモンと同じような働きをする成分がある為、その害を避ける為一日の最大摂取量を、厚生省が設定しましたが、すると大豆製品である味噌、醤油や豆腐の日本伝統食品まで毎日食べると危ないのではないかと誤解する人も出るくらい、世の中滅茶苦茶です。自然のものを自然に摂取している限り、摂取量を超える事等殆ど無い事は歴史が証明しています。
病気の時にお粥を食べました。実際お粥は美味しいし、呑み過ぎにご用心!身体に優しい食べ物ですから、週末のブランチに、よく中華料理屋でコンジーを食べます。でも、蕎麦やお粥だの身体に優しいものばかりだと、身体がナマッテしまいますから、何か硬い物をバリバリ食べるとかして、身体に適当な負荷をバランス良く掛けなければ、自然で健康な身体を作り、維持する事は出来ません。特に、赤ワインのようなアルコール飲料に付いては、この注意が必要です。フランスでは心臓疾患による死亡率が英米に較べて確かに低い事は事実ですが(日本は、心臓病による死亡がフランスより更に3割も少なく、日本食の優位性を証明しているのでしょう)、だからと言って平均寿命が高い訳でもなく、逆に呑み過ぎによる肝硬変を始めとする肝臓や消化器疾患による死亡率は英米の数倍と言われています。宇宙は、バランス(中庸)で成り立っている事の証明でしょう。
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2)東洋の医学、哲学、生活が西洋人から見直されている
米国・厚生省(US Department of Health and Human Services)は、毎年医療費コストが、肥大化し膨張する事に危機感を憶え、医療システムの抜本的改革に取り組まねば、国は破綻すると言い切っています。US1兆ドルは楽に越す医療費は、第二次大戦直前のコストと比較すると約300倍にも膨れ上がって居り、高齢化社会を迎えた今、コストは雪達磨式に増え続けているのです。そのコストの何と約7割もが慢性病/生活習慣病、所謂成人病関連に費やされているのです。日本でも事情は同じで、死因の第一位は癌で死因の三分の一、第二位が脳血管疾患、第三位が心臓疾患で夫々2割弱、合計するとこの三死因で7割を占めているのです。又糖尿病も急増しています。アメリカ人の癌の原因を調べたイギリス人の有名な研究は、第一番に食事、第二番に喫煙をその原因として特定しました。大病院の待合室は老人のサロンと化し、お茶、お弁当持参で、ダベッテいる光景など日常茶飯事で、何の違和感もありません。でも、この慢性病・成人病は、ほんの一寸した食事への配慮とか、適度な運動とかの生活習慣の変更でかなり防ぎ且つ治す事が可能なのです。姑息な小手先の財政改革より、先手を打った予防の施策が、財政の健全化にも如何に効果的であるかがお判りでしょう。又それ以上に個々人の健康増強により生活の質の向上が個人レベルでも社会レベルでも確保されるのです

そもそも、現代西洋医学は、地道な基礎医学を土台にしつつも、苦しむ患者の痛みを和らげるとか、既に悪くなってしまった内臓諸器官の治療やら、傷の縫合等対処療法的、臨床医学に力点が置かれて発展してきたものですが、病気にならないように対策を取ると言う予防医学の見地からは、私の如き素人の眼から見ても、マダマダ無力としか思えません。風邪薬なんかが、その代表例でしょう。風邪薬は、症状の緩和をするだけが目的で、複合病である風邪そのものを治す薬は未だ無いのです。何か体調が悪く掛かりつけの医者に診て貰っても、「まあ、そう言うこともありますよ、一寸疲れただけじゃないですか。本当に悪くなったら、又いらっしゃい」と言われ、まあ取敢えずこれでも飲んで様子を見てくださいと、何だか良く分からぬ薬を処方されるのが落ちです。 患者としては、あなたは未だ本格的患者では無いから、本格的になったらおいでの言葉にどうすればよいのでしょうか?医者とは何か?医療とはなにか?健康とは何か?そんな根元的な疑問が沸々と湧いて来ます。その点東洋医学は、交通事故等で受けた傷を治す等、今ここの痛みを和らげるという目的には、西洋医学に大きく水を空けられていると思いますが、病気の源に迫る根本治療と未病を防ぐと言う未だ発病していないが、体の発する要注意信号を素直にキャッチし対策するアプローチは西洋医学の全く及ぶところでは無いように思えます。この姿勢は、西洋医学が謙虚に学ばねばならない、今後の課題でしょう。7割もの金が、慢性病の治療に消えるわけですから、何も政府の予算上の構造改革の観点からではなく、本当の健康についての充分な認識をしっかり踏まえた上での論議、薬漬けの医療による延命で、患者は本当に幸せか?それで国の平均寿命が延びたから、日本は一流国か?命の意味をもっと真剣に考え直し、日々の生活の質の面にもっと目を向け、物質的には勿論、精神的にも豊かで充実した生活環境を作る必要があるのです。これは、単に厚生省だけの問題の枠を遥かに超えている、人間社会の根源に拘わる問題です。この解決策の実行が、人々の健康ひいては幸せを守り、結果医療費の膨張も阻止出来るのです。そんな物心両面で豊かな生活の基盤を支える、重要な要素の一つが、食生活の改善なのです。東洋の言葉で表すと医食同源という事です。
最近の若者が、直ぐ切れるのは、世界中共通の傾向です。何故でしょうか?社会経験の不足によるストレスコントロール能力の低さ、或いは昔とは較べものにならない程のストレスフルな社会になっていると言う事も有るでしょうが、何と言っても見落としがちですが根本の原因が、食生活の乱れによるものだと思います。家族揃って団らんしながらの食事が稀になりつつある今、一人でジャンクフードばかりを食べる事が、大きな原因の一つなのです。成長期の重要な時期に家庭の団らんを通した社会性を身に付けられない事と、必要栄養素を取らない事による様々な弊害が脳と心の健全な成長を妨げている可能性が大きいのです。そんな子供が大人になっても、その子供を教え導く事なんて、全く出来ない相談です。情けない事ですが、反面教師の役割を担うのが精々でしょう。子供達ばかりの話しではありません。大人も然り。成人病は、食事や運動を真面目に考え、生活習慣を改める事により、克服出来るケースがかなりあるのです。「判っちゃ居るけど止められない」のが、人間の弱みではあるのですが・・・、なんでも努力は必要です。我がオンタリオ州も、2005年に厚生省の他に健康推進省を新設し、食事の見直しからスポーツまで、身近で重要な問題を取り上げる事になった時は、良くやった!と拍手したのも束の間5年の命で、2011年には厚生省に吸収合併されてしまい、その後どんな仕事をしているのか、全く聞こえて来ません。残念な事です。

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(3)東西の融合による更なる飛躍へ向けて

米国厚生省は、米国最大(と言う事は世界で最大)の医学研究所 NIH(National Institutes of Health)の傘下に、NCCAM(National Center for Complementary and Alternative Medicine ー 国立補助的代替医療センターとでも訳す機関)を1992年に設立して、東洋医学の根本治療や予防医学的要素や、食事療法、イメージ療法等の本格的研究促進に着手しています。名前の補助的とか代替的とかの言葉が示すように、腰が引けた結果で終わらなければ良いなと願って止みませんが、このNCCAMが、抜本的改革の手段としての重点的研究分野として次の分野等を提言しています。

   1)慢性病の予防と治療の為の食事療法の研究
   2)鍼灸、指圧マッサージやカイロプラクティック等東洋医学の研究
   3)Music TherapyやImaging、又Meditation等心のパワーの利用の研究
   4)西洋医学では、使われない薬草や薬の研究

食事療法の分野でも、従来の肉食中心の米国西洋料理の欠陥が指摘され、米国人に不足しているミネラル、ビタミン等を野菜等から摂取すべきであり、そのためには日本食やベジタリアン・フード、マクロバイオティック食等が、癌や心臓病、糖尿病などの生活習慣病の危険回避に極めて有効であるとして、推奨しています。味噌、醤油、豆腐等と並ぶ日本食の代表の一つである「蕎麦」は、そう言う時代の要請の最先端を行く優れた健康食品である事を再認識する必要があります。 又人間の本来の力である、自然治癒力の最大限の活用の為の心の分野への踏み込みの重要性をもシッカリ認識しています。従来のような西洋は西洋、東洋は東洋ではなく、東西医学の優れた面を合体させ、シナジー・エフェクト(相乗効果)を発揮した総合人間医学の早期確立が、切に望まれる処です。

肥満率の爆発的増加を憂いた米国では、実はこのNCCAM発足より前の1977年1月に、上院の特別委員会が「米国における食生活のゴール」と称する画期的な報告書が発表され、委員長の名前を取ってマクガバン報告と呼ばれています。エドワード・ケネディーやウオルター・モンデール等も委員に名を連ねています。英語版★ McGovern Reportに詳しく書いておりますので、ご興味あればそちらをお読み戴きたいと思いますが、要は医療費削減による財政改革と同時に全米国民のQOL(Quality of Life)の最大化を図る為、米国人が健康に生きる為の指針となる食生活の在り方を説いたもので、米人好みの高カロリー、高タンパク、高脂肪、高糖分、高精白食品の5高を慎み、20世紀初頭の米国人の食事スタイルに戻すべき事を提唱したのですが、その時に日本の伝統食こそが、彼らの目指す理想的な食事である事を発見して驚いたとの事でした。しかし好きなものを全部否定された様な厳しい内容が一般大衆受けしなかったと共に、食品、畜産、製薬、医療等実業界とそれらに癒着している政府機関の反撃に遭い、社会的に葬られてしまったのです。

次いで1983年にはNCI米国立癌研究所が資金を出したプロジェクト、所謂China Studyがスタートし、7年の歳月を掛け1990年に完了したのです。研究は、コーネル大学、中国予防医学学院とオックスフォード大学が、中国65地点での田舎の食事、生活スタイルと死に至る疾病との関係に付いてのもので、動物性の食事と植物性の食事の健康への影響を比較分析したもので、結論は西洋風の肉食中心の食事が、西洋生活習慣病による死亡率を高めており、その対策は植物性、しかも精白しないWhole foodsを中心とした食事にすべきと言う結論になった。主研究者の一人であったコーネル大のコーリン・キャンベル教授は研究結果を発表しようとしたが、上記のマクガバン報告と同様に関係業界からの反撃、嫌がらせ等余りに「問題」が大きすぎ同僚研究者は皆尻込みした為、息子と同大ジェーコブ・シャーマン名誉教授共にThe China Studyと言う本に纏め、漸く15年後の2005年1月に出版出来たのです。2013年には100万部を超えるベストセラーとなりました。これも、英語版に詳しく書いてありますので、ご興味あればどうぞ。

ここで人間の本来持つ自然治癒力、言い換えれば免疫力とはどう言うものか、又どうすれば免疫力を高める事が出来るのかトロントのMidtownでLeaside Acupuncture and Shiatsu Clinic(591 Eglinton Ave. East, Toronto、 Tel: 416-486-0287 Bayviewとの交差点の少し西の南側にあります)の免許鍼灸師 小島正先生が判り易く纏めて呉れた資料を掲載しましたので、御興味のある方は、「資料 免疫について」をクリックして下さい。
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(3)食の安全確保と科学万能主義の戒め(幸せな未来へ向けて)ナイアガラの滝

ほんの一昔前までだったら、前に述べた事だけでかなり、吾等の健康を守る事が出来たのですが、今は状況が全く違います。幾ら栄養的に優れている食品でも、果たして本当に健康を守れるのだろうかと検証してみる必要があるのです。昔のように、バランスの取れた「食事」と適度な「運動」さえしていれば健康になれると無邪気に言う事は出来ないのです。勿論健康作りの二本柱として、食事と運動は今も変らず最重要なのですが、その前に遺伝子組み替え食品(GMO)や、ダイオキシン等の環境ホルモン(外因性内分泌撹乱化学物質)、Post Harvest農薬の問題等々、人間の死命を制する食の安全性を脅かす新しい問題が次々と噴出して来ているからです。 
本当に胸を張って、「蕎麦を食べて健康になろう」と言う為には、使用する素材である、玄蕎麦、大豆、醤油や鰹節等々が、GMOや残留農薬等の新しい食の脅威から可能な限りフリーである事の確認が大前提になるのです。何故、可能な限りとしか言えないのか?と思われるかも知れません。それは、人間が、自然界の食物連鎖の頂点に君臨しているからなのです。例えばダイオキシンは自然界には、存在しない物質で人間が作り出した有機塩素化合物なのですが、PCBなどと同じく通常生物により分解されず、脂肪に溶けて蓄積されるのです。日本人の好む魚の場合、除草剤等の農薬、石油化学コンピナートでの有機塩素化合物の製造過程、身近な処ではゴミの焼却やディーゼル自動車の排ガス、タバコの煙等も同様に発生源なのですが、それら発生源から、海/川や大気中に放出されたダイオキシンは、プランクトン⇒魚⇒鳥⇒動物⇒人間という食物連鎖に組み込まれ、濃縮されてゆくのです。
大型Steelhead(降海型野生虹鱒)私も、ヒトカドの釣り師として自任するアングラーで、大物が釣れた時は嬉しい物です。しかし大物程、これら有害物質を蓄積しているのです。見た目は全く普通の、どころか野生の美しい魚体をキラメかせ、食べてはシッカリと脂の乗った旬の味は、釣り師で無いと、そうそう食べる訳には行かないものです。こんなに楽しめて何が悪いの?と思いたくなるのですが、そのツケはゆっくりと時間をかけて支払いを求めてくるのです。発ガン性、生殖毒性、催奇形毒性、免疫毒性等のほか、遺伝毒性も疑われています。1996年のOur Stolen Future(奪われし未来)と言う本では、我トロントが面するオンタリオ湖におけるPCB汚染について、鮭や鱒の中大型魚は、湖に流れ込んだPCBを280万倍にも濃縮しており、これらを食べる人間やカモメ等水鳥は、これを更に、人の場合は20〜30年、カモメは1年かけて高度濃縮して、次の世代へ、胎盤と母乳を通して渡していっている仕組みを説明しています。伝統的な漁業権を保障されているインディアンは、禁漁期とは無関係に漁が出来、従ってそう言う魚を食べる事が多いのですが、免疫力の低下、発ガン率、奇形児誕生等の率が、一般人よりかなり高いとの新聞記事を読んだ事があります。又カモメは異性に求愛行動を取らない生殖異変とか卵がかえらない等が報告されています。1980年頃のデンマークの調査でも、当時の成人男子の精子の数が20年前の男子のそれより25%も少なくなっているとの報告や、2000年代との比較では半世紀で半減との報告もあるとのことです。アメリカでも、50年前は乳がんは50人に一人だったのが、今は8人に一人と急増加し、女性死亡率のトップになっていると言われています。又、アトピー性アレルギーで苦しむ子供も大変増えています。このように、目には見えなくとも、確実に私たちの周りに、そのツケの支払いを求める兆候が現れているのです。自分たちで撒いて、自分たちが苦しむ、言わば自業自得とも言えますが、生産効率と収益だけが最優先され、新しい技術に付帯する諸問題、人間の幸せについての考察と検証が置き去りにされた、言わば大企業のエゴと政治の貧困のツケが、罪の無い一般大衆に回されているのです。然し、これからは我ら無邪気な大衆も、罪が無いとは言えなくなるのです。最終消費者として我々一人一人が、人や地球の存続に危険な商品は、安かろうがボイコットする知恵と勇気が要求されているのです。
そんな事を十分に踏まえた上で、蕎麦カナダは精一杯に努力しているのです。ですから胸を張って、「いらっしゃいませ」と言えるのです。

思いあがりの戒め
上記の本 Our Stolen Futureは、環境ホルモンの危険性にいち早く警鐘を鳴らし評価が高かったのですが、それが発表されて丁度10年経った2006年の5月、米国の科学者団体 The American Council on Science and Health (ACSH)の出した10年の総括は、現実は筆者等が脅かしたようにはなっていない、謂わば科学推理小説のようなものであったと断定しています。又、1962年Rachel Carsonにより書かれた名著「沈黙の春」Silent Springは、死の妙薬として農薬を定義し、その使い過ぎによる環境破壊と生命への危機に警告を発し、結果米国が環境保護庁EPAを新設する契機となり、各国も農薬規制を強化し、DDTの使用を禁止する等その影響は大きいものでしたが、英国では学会やマスコミの一部では、沈黙の春は、真実ではない恐怖を煽ってDDTを禁止させ、大勢の子どもの命をマラリアで失わせたのではないかという批判が出始めていると言う。勿論事実の検証をする事は、次のステップに進む上で不可欠の事である事は確かだが、科学的研究が進み、これらの本が、現在100%正しいと言う事が出来なくなったとしても、その先見性と果たした役割の重要性を否定出来るものでは無く、今更重箱の隅をつつく様にDetailを持ち出して科学的でないとか推理小説だとか批判するのは、フェアーな態度とは言えない。現在の批判が、将来の批判に耐えられるなんて、思い上がるべきではありません。科学は、所詮仮説の上に成り立っているのですから。その時代時代には、夫々の背景と思想があり、科学技術も十分ではないその中で、人類の未来に係る重要問題の方向決定をせねばならない時があるのです。如何に真剣に、且つ人類に愛を持って問題を明らかにし、取り組んだか、その精神こそが重要なのに、その気高い心もなく、単なる揚げ足取り的な批判は、小人閑居して不全を為す所作。厳に慎むべきものである。その根底には、現代社会を蝕む「科学万能主義」と言う人間の思いあがった心があるのです。

現代科学は、どれ程の真実を解明しているのか? 又は、解明出来るのか?現代科学は、無限の宇宙の真理にどれ程肉薄しているのか? 我等が住む太陽系の一番端の惑星である冥王星の外に更に新しい惑星を発見したと言う新聞記事を読んでビックリしました。こんな基本的な事が、今頃(2006年)になってやっと判ったなんて!かのガリレオが言ったなら新発見だと喜ぶのでしょうが・・・。そんな近い惑星すら、ようやく発見出来た程度だから、ましてや銀河系宇宙どころか、その外にある別系統の宇宙の事など、何も判っていないと言うのが実情でしょう。
では、そんな遠くの話ではなく、我等自身の身体に付いてはどうでしょうか? 60兆個を優に越える細胞により出来上がっているそうですが、個々の細胞やその集合体の器官は固より、それが全て有機的に繋がった有機体として、生き物としての人間のどれ程が解明されているのでしょうか?ましてや、他の動物とヒトを分ける「心」やその他の精神活動等の解明は? そうです。実は殆ど判っていないので、学問が成り立つのです。宗教や哲学にはじまり、経済、政治、文化、社会、自然科学・・・・・全てがそうです。人間は、もっと謙虚に自己を弁える必要があります。人智を超えた偉大なものは存在するのです。それを、ヒトは神と呼んで来ましたが、呼ばなくても同じ事です。人間の及びもつかないもの、真理、は言葉や科学を超えてあるのです。芸術や学問は、いかにしてその真理に近づけるか、又は一部にでも到達できるかとの問いに対する永遠の努力なのです。
身体の仕組みが判ってないから、病気を医者が治せない、或は経済学の権威者が株で儲けられないなどは、ほんの一例に過ぎません。でもだからと言って医者や学者を非難する事は出来ません。それが我等の生きる宇宙の成り立ちなのですから。医学の進歩、特に生命工学の発展は目覚しいものがあります。研究が専門化し分子のレベルにまで深化していますが、それの全体の中での位置づけと役割に付いては、全く無視されているのではないでしょうか? ましてや命の基本をなす遺伝子や免疫等の仕組みや心と体の関係など、漸くその途方もなさが判り始めたに過ぎない段階なのです。ですから、昨日までの治療法が、今日は全く逆の治療法に取って替わられる事が日常茶飯事なのです。医師は、科学のそんな限界を弁えた上、謙虚に誠実に対処するべきなのです。猟師木を見て森を見ずと言う諺は、日本では駄目猟師の事を言うのですが、西洋では森より木を深く追及する文化なので、西洋の学問をする時には、森全体を捉え、補正をしながら進む目配りが必要なのです。、医者が分子を見て、患者を診ずと言う事にならない様にお願いしたいものです。人間は、神を畏れ、我等生きとし生けるものの住む世の摂理を、謙虚に受け止めるべきなのです。

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